核磁気共鳴室

NMRの最も得意とするところは原子核の種類が分かる上に、原子核同士のつながりが分かる点にあります。結合による相互作用はスピン-スピン結合定数に現れ、空間的な相互作用はNOE(核オーバーハウザー効果)として現れます。現在ではこれらを利用した様々のパルスシーケンスが開発され、ユーザーは原理を意識することなく簡便に構造解析に利用できます。

測定原理

測定原理
NMR(核磁気共鳴)とは、静磁場に置かれた化合物中の個々の原子核が、固有の周波数のラジオ波と共鳴する現象です。
この共鳴周波数が原子核の置かれた環境によりケミカルシフトする事を利用し、分子構造や運動状態等を調べる分析手法をNMR分光分析法と言い、未知化合物の構造決定や、不純物の確認等、様々な分野で応用されています。
NMR測定装置では、超伝導磁石により外部静磁場を作り、その中に入れられた試料にパルス波をあて、試料中の原子核を励起します。
この時吸収されたエネルギーはサンプル中の観測核の状態により特有の周波数を持って減衰するラジオ波の重ね合わせ(FID)として放出されますので、これを受信器で検出、フーリエ変換というデータ処理を経てNMRスペクトルデータを得る事ができます。

各装置の特徴

AV400Nは低分子の通常測定には十分な性能を有している汎用機です。

AV500 + CryoProbeは1H, 13C測定専用です。CryoProbeにより、検出器を液体ヘリウム温度に冷却してノイズを低減することにより、検出感度が非常に高く、短時間での測定や低濃度サンプルの測定も可能です。
後述のECZ700Rと比較すると、AV500 + CryoProbeはECZ700Rの5倍以上の感度となります。S/N比は積算回数の1/2乗に比例することから、同じS/N比 のスペクトルを得るために必要な積算回数は1/25でよいことになり、通常、長時間を要する13C測定が数分~数時間で測定でき、劇的に測定時間を短縮することが可能です。また、13C-13Cの直接結合を観測する二次元測定INADEQUATEは、通常のNMRでは天然存在比での観測は事実上不可能と言われていましたが、本機ではすべての結合を明らかにすることが可能です。(INADEQUATE測定例

ECZ700Rは本学最大磁場強度を持つNMRです。NMRは超電導磁石の静磁場強度が高いほど、横軸の分解能が上がります。そのため、タンパク、糖鎖、核酸など、似かよった構造が連鎖して狭い範囲にシグナルが密集しているようなサンプルの測定に適しております。

分析装置・機器リスト