固体核磁気共鳴室

固体NMRの特徴として「試料の形状を問わず基本的にそのまま測定できる」という点が挙げられます。従って多くの場合、特別な前処理などは必要ありません。また、本装置で可能な測定法は固体・液体試料問わず非常に多岐に渡り、溶液NMRで主に用いられる構造解析だけでなく分子運動性についても詳細に調べることができます。

測定原理

固体状態の化合物の高分解能なNMRスペクトルを得るには、隣接する1H核からの双極子磁場、 四極子との相互作用及び化学シフトの異方性などから生じる線幅の著しい広がりを取り除かねばなりません。

例えば、13C核の場合、隣接する1H核との双極子相互作用は40kHzにおよび、化学シフト異方性 による線幅の広がりは数百ppmに達します(注:600MHzの装置では13Cのスペクトルにおける1ppmは約150Hzです)。 これらの値は、溶液のスペクトルにおけるピーク線幅が1ppmもないことと比べると、非常に大きなものです。 異種核間双極子相互作用を取り除くために、高出力の1H共鳴周波数ラジオ波を照射する必要があります(双極子デカップリング)。 化学シフト異方性による線幅の広がりは、試料を外部磁場の方向に対して54.73°の方向を軸として高速回転させれば取り除けます (マジックアングルスピニング)。更に、13C、15N、29Siなどいくつかの核は、固体状態ではスピン-格子緩和時間が著しく 長くなるために積算効率が大きく低下します。これは同一試料中に1H核が存在する場合、その豊富な磁化を巧みに利用すること (交差分極法)でかなり克服できます。

これら三つの方法を併用して測定するのがCP/MAS (交差分極マジックアングルスピニング)法です。 こうして得られる固体高分解能スペクトルから化合物の結合様式やコンホメーションなどを詳細に議論できるばかりか、 分子運動性の検討や、測定条件を適当に選べば組成分析など定量解析も可能になります。一方、2H核など固体広幅測定では 高出力ラジオ波のパルスが必要となります。

分析装置・機器リスト